"誰か一人でも信じる人間がいるかぎり、本当でない物語などありはしないのだ。"
『オーギー・レンのクリスマス・ストーリー』より
『ガラスの街』『幽霊たち』『鍵のかかった部屋』からなる『ニューヨーク3部作』で知られるアメリカ文学の巨人ポール・オースターが手掛けた映画脚本を収めた1冊。
オースターがどのようなアプローチで脚本を書き、そして映画と向き合ったのかを本人が語ったメイキングなども併録されており、本来は小説家であるオースターの〈脚本家〉というレアすぎる側面を窺い知ることができる貴重な作品集です。
映画『スモーク』の原作である短篇小説『オーギー・レンのクリスマス・ストーリー』も併録、これがまたイイ味してるんです。
ニューヨークの一角にあるブルックリンの、その片隅に生きる人々が抱える不安や孤独、それらをとある葉巻店で意図的な無秩序さで交差させることで、オースターは物語に人肌の温もりを与え、我々読者(あるいは鑑賞者)と物語の境界を溶かしていく。
その心地よい混沌の中に居続けると、きっと遠く離れたブルックリンの息づかいが聞こえる気がするはずだ。
オースターが描くフィクションは、フィクションであるがゆえに、リアルよりもリアルらしく振る舞う、そういうフィクションなんだと思う。
"ひょっとすると私たちは、ある程度の衝突を必要としているのかもしれない。他人と話すにあたってはかくあるべし、と説く高潔にして敬虔な精神から時おり解放されることが私たちには必要なのかもしれない。そうだと言い切るつもりはないが、一考に値する問題であることは間違いない。"
『「ここはブルックリンだ。数字なんか関係ないぜ」』より
【目次】
序
ザ・メイキング・オブ・『スモーク』:インタビュー アネット・インスドーフ
スモーク
オーギー・レンのクリスマス・ストーリー
「ここはブルックリンだ。数字なんか関係ないぜ」
役者のためのノート
ブルー・イン・ザ・フェイス
新潮文庫
平成7年初版
文庫本(ソフトカバー)、405ページ
150×108mm
表紙小スレ・ヤレ、三方ヤケあり
状態:経年並み